飛び立った言葉 – geflügelte Wort
ゴスロリ、ロリコンとロリータという言葉が日本語として定着していますが、ロリータはご存知の通りウラジーミル・ナボコフの小説のタイトルでもあり、主人公の少女の名前でもあります。
このように、いつの間にか元の意味から離れ、独り歩きしてたという言葉ってありますよね。そういう言葉をドイツ語では歩いていったのではなく、『飛び立った』と表現します。
geflügelte Wörterの意味と成り立ち
geflügeltes Wortは、直訳すると『翼のつけられた言葉』となります。初めて使われた/元の意味から羽ばたち、新しい意味で使われるようになったということです。
geflügelte Wörterの語源
面白いことに、このgeflügeltes Wortという言葉自体、派生語なのです。
この言葉が初めて使われたのは、ホーマーの作品で、『オデッセイ』には58回も登場したそうです。中世期にドイツの詩人Heinrich Frauenlob (Henry of Meissen)も、この言葉を『自分の翼をはやした言葉』として定義しています。
1742年に、ドイツの詩人のJohann Heinrich Voßがホーマーについての詩を書いた時に、このgeflügeltes Wortという言葉を使ったと言われています。
しかし、この言葉が現在のような意味で使われるようになったのは、ドイツの哲学者であるGeorg BüchmannがGeflügelte Worte, Der Zitatenschatz des Deutschen Volkes (翼のつけられた言葉:ドイツの言葉の宝箱) と題して 1864年に出版された本に由来しています。
日本の派生語
日本語には、本当に中国語から、仏教用語、落語からオランダ語、ポルトガル語まで、沢山の言葉が現在全く違った意味で使われていたりするものがあります。
マージャンもそのうちの一つで、例えば「テンパる」と流行語にもなりましたが詰めの段階で、緊張して焦ってしまう『聴牌る』から来たそうです。
蛇足
最近、夏目漱石の『こころ』を読んでいて、今では全く使われなくなった言葉が多くて常に驚いています。現在偶然にもカフカの『変身』をドイツ語で読んでいますが、これが出版されたのは、偶然にも『こころ』が出版された次の年、今から100年前です。不思議なことにスラスラ読め、違和感がないのは、ドイツ語がそれだけ変わっていないのか、又は流行語などないから読めるのか、不思議なこところです。